大城 知幸(野菜)
大城 知幸
北大東村
| 農家歴 | 25年 |
| 栽培面積 | じゃがいも4,500坪、さとうきび12,000坪、かぼちゃ600坪 |
| 栽培品種 | じゃがいも、さとうきび、かぼちゃ |
島の農業は、仲間を置き去りにしない。
「明日が早いから…」と言いつつも、夜遅くまで及んだインタビューの翌日は、島で最も忙しい選別が始まる日。達人は、まぎれもなく寡黙な情熱家であった。翌日、早朝から始まった集荷場で目にしたのは、選別機の前で真剣に指示を出す達人の姿であった。
島のみんなは、家族と同じさあ。心をひとつにつくった、じゃがいもだよ~。
立春の2月4日、暦の上では春のスタート。
那覇より390キロの沖縄最東端の島・北大東へ飛んだ。
日本一早い低農薬の新じゃが産地を支える達人に会うためである。
空港に着いた翌日は、おりしも選別作業の初日。
島で、1番忙しい時期に入る。
この日から島の人たちの緊張の日々が、延々3ヶ月続く。
4~5日に1度、出港する船に遅れることなく、定時・定量の出荷を続けなければならない。
達人も収穫の追い込み中のため、インタビューは急きょ夜に変更。
しかし、とれたてじゃがいもで調理した「煮っころがし」や「ポテトチップ」の試食を兼ねた心あたたまる歓迎パーティに感動。
ほんわりした口当たりと、サクサク感がたまらない。
無口の達人は、料理をほお張りながら、じゃがいもの栽培、島の農業について熱っぽく話してくれた。
大城知幸(おおしろともゆき)さん、49歳。
農業歴25年。
じゃがいもを始めて10年になる。
現在、馬鈴薯部会25名の部会長を務めて3年目。
じゃがいも4,500坪、さとうきび12,000坪、かぼちゃ600坪の畑をもち、じゃがいもは毎年約30トンを生産している。
じゃがいもは、さとうきびとの輪作で、さとうきびに害虫を寄せつけないなど連作障害を防いでいる。
大城さんは、部会のみなさんと地道な生産を続け、3年前には、県知事から沖縄で2号目のエコファーマーにも認定された。
もちろん、第1号は、初代部会長。
今では、部会員全員がエコファーマーの認定を受けている。

「栽培で分からないことがあると、とことん追求します。
そうしないと前に進めないんですよ」
大城さんは、1日じゅう畑にいる。
畑で現場の作物や土を観察して勉強するのだ。
広大な畑の土壌は、国頭マージ・島尻マージ・赤土(テラロッサ)が分布。
決して一定ではない。
PHの低いところは、タンカル(炭酸カルシウム)という土壌改良剤でPHを上げ、土壌をこまめに改良。
風対策も苗用のさとうきびを周囲に防風壁として植える。
とくに神経をつかうのが、水のこと。
島は、渇水で苦しめられた歴史そのもの。
水道工の経験もある大城さんは、島のみんなと一緒になって、露地では珍しい、畑にチューブを張り巡らす点滴と呼ばれる水やり法で、工夫を凝らしている。
また、「水兼農道」も機能している。
農道を水路にして、島にいくつも設備された貯水池に雨水を流れ込ませるのである。
なんとか空港の滑走路からも、水が流れてくる。
「孤島苦」と闘ってきた島の人たちならではの工夫だ。
島ではみんなが、日々栽培技術を高めることを心がけている。
現場で起った問題は、すぐに電話でお互いに連絡しあう。
そこで、1つひとつ解決していくことで、島の農業を工場させているのだ。
「ひとりでも生産が遅れたりすると、島全体の向上にならない。
だから、みんなで一緒の質のいい生産をしていく。
これが島のやり方です」
大城さんは、技術や作業の遅れをとる仲間たちを、決して置き去りにしない。
大城さんの人望が厚い理由だ。
島の半数以上が兼業農家。
人手の足りない家も少なくない。
大城さん自身も力強い助っ人の清子さん(奥さん)と金物店を兼業している。
高校から大学までの3人の子供たちも、すでに島を出た。
「送金がたいへんですよ」と夫婦で屈託なく笑う。
「ほとんど家にはいませんよ。
ほんとに仕事しているのか心配ですよ。あっはは」
冗談まじりに笑顔で話すのは、清子さん。
家にいない理由は、達人の家にはとにかく各農家から電話がかかってくる。
その相談に達人は、島の西や東に駆け巡る。
家にいる暇がないのだ。
達人のじゃがいもへの観察眼や洞察力は、島の人たちの大きな支えになっている。
フィリピンから来た研修生たちも
「りっぱな人。真剣に技術を教えてくれる」
と、達人の人柄に太鼓判を押した。
「島のみんなに利害関係なんてありません。家族みたいなものですよ」
北大東で良質のじゃがいもがつくられるのは、島が家族ぐるみで取り組んでいるからだろう。
3年しか経たないかぼちゃづくりでも、すでに県内トップレベルの反収をあげている。
心をひとつにした、農作物づくりを目指す。
これが島のじゃがいものおいしい理由だ。
●名前の由来は?
「じゃがいも」の呼び名は、1600年ごろオランダ船によりジャガタラ港(現在のジャカルタ)から来たから「ジャガタライモ」、それが変化してなったといいます。
●栄養バツグン
じゃがいもはフランス語で「大地のりんご」と呼ばれるほどビタミンCやB1、B6やカリウムなどが豊富。ビタミンCは100g中に15~40mgほど含まれ、しかも熱に強いので煮物、汁物、揚げ物、炒め物でも壊れません。

